意図せずに面白い本や作品に出会うとうれしい。そんな経験は誰しもあると思う。
ふらっと街の本屋さんに入ったら、運命の本に出会った、みたいな。
最近では本屋さんをほとんど見なくなった。それでも数少ない本屋さんに僕はわざわざ足を運ぶ。思わぬ本との出会いがあるからだ。
都心部で本屋さんという、日本だと蔦屋書店、シンガポールだと紀伊國屋書店が、いまだにビジネスを頑張っていて心の底から応援したい。
がんばれ、本屋さん!Amazonに負けるな!
さて、今日は本との出会いではなく、面白い映画に思いがけず出会った話である。
その映画との出会いは、シンガポールから日本へのフライトの最中のことであった。
やはりフライト時間が6時間ともなると、ネットフリックスでなかなか視聴が進んでいないドラマをスマホに保存して見るのが習慣であり、ささやかな楽しみとなっていた。
ただ、今回は事前にドラマをダウンロード保存する時間的な余裕がなく、何も手持ちのない状態で飛行機に乗ったものだから、備え付けの機内エンターテイメントを楽しむことにした。
おすすめ映画の一覧を眺めながら、何かいい映画はないかを探していた。
ただ、どれも観る気が起きない。多分疲れていたんだと思う。映画を見るのにも体力がいる。
英語音声は特に頭が疲れると思い、母国語の日本語音声の映画を探していたら、サムネイルからして明らかに”サムライ”を題材にした映画を見つけた。

サムネイルからして絶対面白くないだろうけど、耳が寂しいもんだから、この面白くなさそうな映画を見ながらウトウト寝ようかと思って再生し始めた。
見始めるとこれまた予想通りで、本当にありきたりの設定で新鮮味がない。つまらない。
江戸時代末期のサムライが現代にタイムスリップして生活するという、何番煎じの映画だよと思いながら、流し見していた。本当に面白くなさそうなのである。
しかも会津藩のサムライが話す日本語は、あまりに訛っていて、正直日本人の僕にも理解できないところもあった。疲れる。ただ訛りの日本語を理解するのを諦めれば、意外と頭は疲れないものだった。
眠気を待ちながら、ぼーっとその映画を見てると、どうやら舞台が京都の太秦にある映画村だった。見覚えがある.
僕は何度も映画村に訪れたことがあるものだから、なんとも懐かしい気持ちになって、面白くないけどポジティブな感情が湧いてきて少しずつ引き込まれていった。
ネタバレになるので詳細は避けるが、時代劇(江戸時代を舞台に描かれるサムライの日本ドラマの総称)の撮影舞台裏を見ているような感覚もあって、時代劇の裏方はこうなってるのか!と、好奇心も刺激されるのが素晴らしく、期待を裏切って、中盤以降はなかなかの傑作映画だった。
気がついたら眠気もすっ飛んで食いつくように見ていた。
アクション映画として見ても、サムライたちの日本刀さばきは見応えがあり、「あれ、これ結構面白くない?!」となっていった。うお、剣術かっけー!って感じで。
最後には、一応伏線回収も用意されていて、是非クレジットロールまで観ることをお勧めしたくなる映画だった。
「侍タイムスリッパー」 (英題: A Samurai in Time) https://share.google/QCykE8IXBwQwUSaOu